太陽と月の物語

「質問を変えます。どうして私を好きだと思ったんですか」
「えー。それ答えなきゃいけない?」
「だって私、軽蔑されてもおかしくないことしてますよ?それなのに、好きって……」

恋人でもない人とフラフラと関係を持っている。
しかも一人じゃなく、同時進行で何人もの人と。

どうして、アキラさんは私を好きだと言うんだろう。

「確かに世間から見ればふしだらなんだろうね。でも俺には君がただ快感を求めるためだけに抱かれてるようには思えなかった」

私がこの短い逢瀬に求めていたもの。

「俺は君との時間に救われた。でも同じように、いや、それ以上に、君も何かから救われたかったんじゃないのか。朝陽」

……そうだ。
救われたかったんだ、私は。

大好きな初恋の人を失い、唯一無二の親友を失った。
私のせいだと責められ、そしてそのことを否定出来なかった。

二人を殺した罪を償うというのはきっと言い訳で、私はいつもその罪悪感から救われたかったんだ。

やっぱり最低だ、私。

「朝陽が何に傷ついてきたのか、今は聞かない。朝陽が話したくなってからでいい。だけど、こうして泣きたい時は俺の胸で泣いてよ」

ね?と小首を傾げながら、アキラさんの指が瞼に触れる。そのとき初めて自分が泣いてることに気づいた。

「優しすぎますよ、アキラさん」
「朝陽だって充分優しい」

その夜。
初めて、アキラさんの部屋に泊まった。アキラさんは宣言通り、ただ私を抱きしめたまま、眠ったのだった。
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