太陽と月の物語
買い物袋の中身を冷蔵庫に仕舞い、脱衣所に着替えの服を置いておこうと思った。別に下心なんてなかったのに。
風呂場のドアの向こう側、シャワーを浴びるシルエット。あの身体を昨日あの男も触れたのだろうかと思うと、何故か面白くなかった。
「……ええ、真月!?」
突然ドアが開き服を脱いだ俺が立っていることに驚く朝陽を抱きしめると、その唇にキスをした。
欲望をぶつけるための快感を煽るためだけの激しいキス。
息つく暇もないキスの合間に性急な指先は朝陽の弱い部分を攻めあげる。愛撫なんて優しいものじゃない。
「……どうし……たの?」
息を切らした朝陽が下から見上げてくる。答える代わりに、朝陽の脚を持ち上げ、熱を貫く。
「昨日もこうやってアイツに抱かれたの?」
「抱かれてなんか……あ……やん、っ……!」
火照った熱い手を背中に回してくる朝陽。
いつもと違う場所、いつもと違う角度が、二人を煽る。
「あぁ……!あ……やだ。ダメ……真月……それ以上……」
「ダメじゃない……っ!朝陽……!」
初めて行為の最中に名前で呼ぶと、朝陽の身体がビクッと震える。朝陽が怪訝な顔をする前に強く掻き抱いたせいで、朝陽は快感に背をしならせた。
“Cry for the moon”
不意に昨日入ったバーのお店の名前が頭によぎる。
無い物ねだり。
奪われそうになったら欲しくなる。
「……ごめん。朝陽……」
シャワーの音とは違う水音が浴室内に響くなか、俺は初めて朝陽の中に欲望を吐き出した。