太陽と月の物語
課長の紹介で前に立ったのは3人。ビシッとスーツを着こなした背の高い男の人とちょっとぽっちゃり体型の男の人。
背の高い人は早瀬さんで、ぽっちゃりの人が松風さん。どちらも今後は真月の下で企画を担当する。
もう一人、松風さんより背が高いスリムな女性は、真新しい制服に身を包んでいるから、彼女が事務担当の方……。
その顔を見たとき、目を見開いた。
息を呑む。動悸が早くなる。
麻子がいた。
中学の頃の麻子をそのまま大人にしたような……。
「宮端麻美(みやばたあさみ)と申します。今年、中途採用でこの会社に入社いたしました。皆様にご迷惑をおかけしないよう、精一杯努力いたします。宜しくお願い致します」
彼女は堂々とそう挨拶をして綺麗な角度でお辞儀をした。
……宮端さん。
麻子なわけがない。
麻子は15年前に亡くなった。
ふと真月も見ると、真月も呆然と宮端さんを見ていた。
その変化は本当に僅かで他の誰も気づいてなさそうだったけれど、確かに目が見開いていた。