太陽と月の物語
「朝陽。俺さ、元の職場に戻らないかって話が来たんだ」
唐突にアキラさんが話題を変えた。表情は至って真剣で、こちらも姿勢が伸びる。
「将大さんが子育てと仕事の掛け持ち中だろう?人手が足りていないんだって。だから、そろそろ戻ってこないか?って。もう頭は冷えただろ?だって」
「……じゃあ、引っ越すの?」
「そうだね。将大さんの家の近くに行くんだ。そしたら、可愛い陽輝ちゃんにいっぱい会えるし」
アキラさんは仕事でミスして、ここの近所の倉庫に異動になったんだ。だから、また同じ職場に戻れるって、喜んでいいことなんだよね?
「だから今日でお別れだよ、朝陽。最後に君の辛い過去を話してくれて、ありがとう。君の今までの行動が初めて線で繋がった気がするな」
「……アキラさん」
「だけど、やっぱり君には娼婦なんて似合わない。亡くなった2人の分も幸せにならなきゃいけないよ」
最後にアキラさんはポンポンと優しく頭を叩いた。それは女性にするのではなく、どちらかといえば、幼い子どもにするようなもので……。
「真月くんに対する気持ちが何なのか、素直になって考えてみなさい。そうだね、これは君への宿題だ。もし次に俺たちが会う時があれば……その時答えを教えてくれる?」
優しく諭すようなアキラさんの言葉に、私はコクンと頷いた。