太陽と月の物語
結局また眠れない夜を過ごした。
……相談なんて出来る友人なんていない。
麻子を亡くしてから大切な人を作るのはやめたから。
唯一打ち明けられそうな姉も他界した。姉のことで気落ちしている両親に心配掛けられない。
「……大丈夫ですか?本当に」
「大丈夫。大したことないよ」
いつもより少し早く家を出たら、更衣室で宮端さんに会った。宮端さんは私の顔を見た途端、その顔を歪める。
「……顔色が悪いですよ……?」
「ちょっと風邪こじらしたみたいなの。最近昼間は暖かいから油断した」
ロッカーの扉に付けられた鏡に映る自分を見た。コンシーラーで隠したつもりのクマが目の下を縁取っている。頬に血の気はなく青白い。
「熱はないから大丈夫よ。さ、今日も頑張りましょう!」
自分を鼓舞するように声を上げて、制服に着替えた私は更衣室を出た。