太陽と月の物語
「あ。春川さん!夏企画のプレゼンで追加して欲しい資料があるんですけど、お願いしてもいいですか?」
企画部の男性、早瀬さんに仕事を頼まれて椅子ごと振り返る。
「良いですよ。どの資料ですか」
「昨年の月ごとの平均気温とこの商品の売り上げ数をまとめて欲しいんです」
付箋にメモを取り、パソコンの隅に貼り付ける。
「これ資料。あれ?」
早瀬さんは手に持つ資料をパラパラとめくった。
「すみません。これ一昨年のやつだ」
「ああ、じゃあ、私が取りに行きますよ。早瀬さん、午後一で外出になってるじゃないですか」
「そうなんです。印刷会社の人と打ち合わせで……お願いしてもいいですか?」
「もちろんです」
了承の意味も兼ねて笑顔を見せた。笑顔は人間関係の潤滑油になってくれる。
早瀬さんから資料を受け取ると私は資料室へと足を向けた。