太陽と月の物語
忘れ得ぬ初恋
♢side 太陽
中学一年生。
真月と出会ったのは15年も前の話だ。
13歳という幼くも背伸びしたい季節の私達は、恋に恋する年頃だった。恋人がいる、それだけで他の人より一足先に大人になったような気持ちになれた。
「ねぇ、聞いて!朝陽!あたし彼氏できた!」
私には大親友がいた。幼稚園の時からずっと仲良しの野上麻子(のがみあさこ)だ。
嬉しいことも嫌なことも一番に相談してきた大切な友人。ある日の放課後、麻子が嬉しそうに私に抱きついてきた。
期末試験を終えた翌日のことだった。テストが返却された憂鬱すら吹き飛ばすぐらい清々しい笑顔だった。
「誰と!?」
「二組の八幡くんって子」
興奮状態の麻子から聞いたところ、八幡くんは麻子と同じ図書委員らしく、仕事のペアが一緒だったことから顔見知りになったらしい。今回の期末試験の勉強を教えてもらったところ、そのお礼に恋人になってほしいと言われたそうだ。
「良かったじゃん。今度紹介して!」
「うん!する!絶対!」
パーマを当てたみたいにクルクルカールした髪。168 cmある身長と細くて長い手足。麻子は昔から大人っぽくて、可愛らしかった。