太陽と月の物語

資料室は廊下の一番奥にある。
薄暗くて埃っぽいし、エアコンがないからいつも扉は開けっ放しだ。

早瀬さんから預かった一昨年分の資料を持って部屋に入ると、奥の方から話し声がした。

「……あの、八幡主任。お願いします!好きなんです!どうしても好きなんです!!」

ピタリと足が止まる。
非常にまずいタイミングで部屋に入ってしまったかもしれない。

一回帰ろうか。
今なら向こうも気づいていないはず。

クルリと身を翻したところで、真月の声がした。

「……宮端さん」

ええ!?告白の相手って宮端さん!?

帰るはずがまたもや、足が止まってしまった。

「ずっと好きだったんです!心の中に違う人がいることは分かっています。でも、私……諦めきれないんです」

脳裏に浮かんだのは、喫茶店で仲良く座っていた二人だった。楽しそうに笑っていた真月……。

「……しょうがないな」

表情は見えないけれど、真月はやっぱり微笑んで、そう告げたのだろうか。

しょうがないってことは……真月は告白を受け入れたってこと、だよね?

……ようやく、真月に大切な人が出来たってこと?

だんだんと滲んでいく視界を拭いながら、私は逃げ出すように駆け出した。

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