太陽と月の物語
私を庇って心くんは死んだ。
私は心くんの両親から恨まれているんじゃないかって思っていた。
だけど、何故だろう。
目の前に立つ心くんのお母さんは好意的だった。
「あの……恨んでないんですか?私のこと」
率直に尋ねるとお母さんはきょとんとした。
「どうして?あの事故は偶然が重なっただけじゃない。貴方のせいじゃないわ」
「でも……心くんが私を庇わなければ……!」
「そうかもしれないわね。でも私は自分の息子を誇りに思っているもの」
心くんのお母さんは視線を墓石に移す。吊られて私も彼が眠る場所を見た。
「愛する人を命をかけて守ったのよ?誰にどう言われようと、心は私の自慢の息子よ」
清々しく言い切った心くんのお母さんの言葉に、私の瞳からポロっと涙が溢れた。
慌てて拭うのに止まってくれない。
そんな私を心くんのお母さんは、あの優しい微笑みを浮かべながら抱きしめてくれた。
「……もしかして、ずっと自分を責めてきたの?」
「……私、幸せになったら、駄目だって……」
「そんな訳ないじゃない。貴方が幸せじゃなかったら、死んだ心が浮かばれないわ」
ぽんぽんと背中を優しく叩かれた。その温もりは心くんに抱きしめられていたあの頃を思い出した。