太陽と月の物語
太陽の行方
♢side月
『15年前のあの絶望の中で、“真月が生きている”それだけが私の最後の希望だった』
家に帰るとポストに合鍵が入っていた。
合鍵の持ち主なんて、一人しか思いつかなくて、胸騒ぎを覚えた俺は慌てて電話をした。
何故合鍵を返却したのか、ハッキリと教えてくれないまま、アイツは15年前の話をした。
お互い、常に心の中にあるのに、今まで暗黙の了解みたいに会話にしなかったのに。
そしてアイツは俺が最後の希望だったと言った。
普段は絶対言わないのに、電話の向こうの囁き声に触発されて、気づけば声にしていた。
「……そうだな。俺も朝陽が生きていてくれたから、救われた」
“真月……。私を身代わりにすればいい”
あの日の朝陽の言葉がなかったら、俺はどうなっていたのだろう?
最低だけど、すがりつく相手がいなければ、あの頃の俺は恋人や親友の後を追っていたかもしれない。
真月。ありがとう。
そんな言葉を残して、電話は切られた。
焦燥にかられた俺の心臓が速くなる。
感謝の言葉が、まるで最後のお別れの言葉に聞こえたのは気のせいだよな?
今日もいつも通り仕事をしていた。明日もちゃんと来るよな?
なぁ、朝陽……?