太陽と月の物語

だけど、嫌な予感は当たるもので、翌朝、朝陽は出社してこなかった。

変に片付いた気がする朝陽の机上が俺の焦燥に拍車をかける。

そういえば、最近、家に来なかった。今まで俺の帰宅時間を教えれば、家に来てご飯を作って待っていてくれたのに。

始業の時間が迫っても連絡一つない朝陽に、隣の席の宮端も怪訝そうな顔をする。

始業を知らせるチャイムと共に、部長が前に立った。
朝礼のために全員、起立する。

「えー。皆さん、お気付きの人もいるかと思うが……事務の春川朝陽さんが今月いっぱいを持って、退職することになりました。今日から有休消化のためにお休みに入ります」

安心感のある仕事をしてくれて、急を要する仕事にも笑顔で受け持ってくれると定評があった朝陽の突然の退職は社内に少なからず動揺を与えた。

何より俺が一番動揺している。

いつから退職を決意していた?
どうして俺に一言も相談も報告もしてくれなかった?

……もう会えないのか?
アサや心みたいにお前も突然いなくなるのか?
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