太陽と月の物語
「宮端さん。こないだの件、しばらく手助けできないかもしれない」
すまないと頭を下げる。
一ヶ月ほど前に、宮端さんからある“お願い”をされた。
それは朝陽の義兄であり、俺の親友の将大さんを紹介してほしいとのこと。
なんでも中学時代、宮端さんが所属していた陸上部にOBとして指導していたのが将大さんだったらしい。
その頃からずっと、片想いを続けているんだとか。
彼は奥さんを亡くしたばかりで、きっとすぐに恋人を作る気になれないだろうと言ったのだが……。
『ずっと好きだったんです!心の中に違う人がいることは分かっています。でも、私……諦めきれないんです』
なんて言われてしまったら、思わずしょうがないなと承諾してしまった。
もちろん、向こうが会いたくないと言ったらそれまでだからなと言い聞かせて。
まぁそれとなく将大さんに電話で話したら、今は子育てで手一杯だと断られた。
でも、将大さんには悪い話ではないから、しばらく経って、もう一回トライしてもいいかなと思っていたのだ。恋人としてはすぐに見れなくても、懐かしい後輩との再会がともすれば沈みそうになる心の癒しになればいいと。
でも人のことを助けているどころじゃなくなった。
「もちろんです。春川さんの方が大切ですよ!」
宮端さんがニコリと笑って、励ますようにその両手を握ってみせた。