太陽と月の物語
何回鳴らしても電話には出てくれない。
メッセージを送っても既読がつかない。
そういえば、会うのは俺の部屋ばかりで、朝陽の家すら知らないことに気づく。
突然、居なくなって知る。
俺は朝陽のことを何も知らないということを。
朝陽が何より大切で、愛おしい存在だったということを。
また繋がらなかった電話を切り、スマホを見てため息をついたときだ。
「真月か?」
抱っこ紐をつけて子供を抱きかかえた将大さんが俺を見つけて声をかけた。
その背後にもう一人人影。
それは朝陽が以前、バーで一緒にいた男だ。朝陽を口説くと将大さんに宣言した男。
俺は朝陽の行方の手がかりを探りに、俺と朝陽の共通の知り合いである将大さんを頼り、家の前で待っていた。
「少し尋ねたいことがあって……」
俺の表情から余裕がないことを感じたのか、将大さんが真剣な表情を浮かべる。
「まぁ中に入れ。あ、晃(あきら)悪いが今日は……」
将大さんが晃と呼んだ男を帰そうとしたが、俺が止めた。
「あのもし良かったら、一緒に聞いてもらえませんか」
もし晃さんの元に朝陽がいるのなら、それでいい。
悔しいけど、辛いけど、朝陽がそれで幸せなら、元気ならそれ以上のことはないから。
「……もしかして、朝陽ちゃんのことか?」
「そうです」
感づいた将大さんの問いに俺が頷くと、2人は怪訝そうに顔を見合わせた。