太陽と月の物語
朝陽の実家へは将大さんが電話をしてくれた。
世間話からさりげなく切り出した。
『朝陽ちゃんは最近、元気にしていますか?』と。
返事を聞いた将大さんが首を振る。
彼女は最近、実家には帰っていない。仕事が忙しいんだろう、とのことだった。
朝陽は両親にさえ、仕事を辞めたことを伝えていないようだ。
晃さんと将大さんからも朝陽に連絡を取ってもらったが、繋がることはなかった。
「……変な事件に巻き込まれたりしていないですよね?」
青ざめた晃さんがポツリと呟いた言葉が室内の空気を重くする。
「……でも、事件に巻き込まれたなら、普通、完璧に退職準備できないだろ」
「……それもそうですね」
だとすると、朝陽は意図的に姿を消したことになる。
……なぜ?
「ここ最近朝陽ちゃんの様子に変化はなかったのか?」
「……そういえば、部下が体調悪そうだったって言っていた」
宮端さんの言葉を思い出し呟くと、2人の顔色が変わる。
「じゃあ、病気か何かってことか!?」
想像すればするほど、話は悪い方向に進んでいく。結局、3人揃っても何一つ手がかりが得られないまま、時間だけが過ぎていった。