太陽と月の物語
結局、朝陽が見つからないまま半年が過ぎてしまった。
「どこ行ったか知らね?……心」
『皆川家之墓』と書かれた墓石の前に佇む。返事がないのは分かっているけれど、精神的に参ったとき俺はいつも心とアサに会いにくるのだ。
中学時代の俺にとって、アサと心は誰よりも大切なひとだった。
しんどいとき、辛いとき、いつも隣にいた心。
アサは俺の初恋の人で、初めての恋人。
朝陽はそんなアサの親友で、心の恋人だった。それだけの関係。一緒に過ごすけれど、そこまで濃密な関係ではなかった朝陽。
……朝陽がいなくなって、こんなに堪えるとは思わなかった。
仕事で新たな企画が出せないほど。他の女に手を出そうと思えないほど。ここまで苦しくなるとは思わなかった。
もしも、もう一度会えるなら。
今度はちゃんと抱きしめて。
ちゃんと伝えるから。
張り裂けそうな俺の想いを届けるから。
俺の全てを捧げて愛していくと誓うから。
だから……。
「朝陽に会いたい……もう一度会いたいよ」
生きて、この世界でまた会いたい。
「なぁ、心。アサ。お願いだ。朝陽の場所を教えてくれ」
風が俺の頬を撫でる。
瞳を閉じると押し出された涙が一筋、溢れ落ちた。