瓦礫の剣士
一本目
あの日は、いつもと変わらない日になるはずだった。あんなことが起きるなんて、誰も想像していなかった。

中学一年生の俺、岩村剣(いわむらつるぎ)は竹刀を背負い自転車を走らせていた。潮風が心地いい。

「今日から防具をつけるのか……。楽しみだ!」

俺は、中学校では剣道部に入った。部活紹介で先輩たちが試合をしている様子を見てかっこいいと思ったからだ。

足さばきの練習から始まり、竹刀を振ったり、先輩たちの練習の様子を見たり、道着を着たりした。やっと今日、防具をつけて先輩たちと同じように練習を始める。

土曜日の練習の日、俺はわくわくしながら自転車を走らせていた。

その時、俺の目の前で小さな男の子が転んだ。多分四歳くらいだろう。

「痛いよぉ〜」

男の子は血の出ている膝を見て、泣き始める。俺は自転車を止め、「大丈夫か?」と声をかけた。

男の子は俺を見上げ、また泣き始める。俺は辺りを見回すが、男の子のお母さんはいない。

「あちゃ〜怪我したのか。えっとな……」
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