瓦礫の剣士
「こんなに必死になって、かわいそうだよな」

その瞬間、ドクンと心臓が別の音を立てた。頭に蘇る最悪の光景。全てが瓦礫の山となり、俺はあの時竹刀を恐怖のあまり強く握った。

地震、津波、避難所、絶望、遺体、涙ーーー。息が苦しくなり、恐怖と不安が募っていく。

「岩村?」

「先輩?」

青羽先輩と英二が俺のもとへと走って来る。俺は立っていられなくなり、その場にしゃがみ込んだ。胸は苦しいし、涙が止まらない。

白鴎高校の人たちも、俺の様子に驚いている。こんな様子を見せてしまい、俺の中で恥ずかしさや恐怖は大きくなっていった。

「剣、行こう」

いつからいたのか、尚が俺の面を外す。そして俺の手を掴んで立たせた。

「またあとで説明します」

尚は青羽先輩たちにそう言い、俺を連れて武道場を出た。
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