瓦礫の剣士
そして、もう動かない人々に向かって泣き叫んでいる人たちを見て、俺はその場で嘔吐してしまった。その日からしばらくご飯が食べられない日が続いた。

「……それだけでもショックだったのに、ボランティアで来てくれた人たちの会話を聞いてさらに傷ついたんだ。『この人たちは弱者。放っておいたら死んでしまう』って。そんな気持ちで助けられても、嬉しくなんかない……」

また、涙がこぼれた。PTSDはいつ治ってくれるのだろう。もう一生このまま……?

「……そっか」

尚の方を見ると、尚は泣くのを堪えている表情だった。

「話してくれて、ありがと」

尚は俺と反対方向を向き、あふれそうな涙を拭っていた。いつだって尚は人に涙を見せない。

被災した、そう言った時もそうだった。泣くのを必死で堪えていた。

教室は驚くほど静かだ。竹刀の音も、試合の音も、何も聞こえない。この空間が心地よい。このままここにいたいけど、戻らないと心配をかけてしまう。

「……なあ」
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