瓦礫の剣士
ちなみに、さっき言った掛かり稽古とは、元立ちと掛かり手二人一組になり、掛かり手が元立ちに掛かっていく稽古方法だ。

部室で着替えていると、三年生の牧場律(まきばりつ)先輩が水筒の水を飲みに来て、一年生の久保英二(くぼえいじ)が忘れた面した(面をつける時に頭にかぶる布)を取りにやって来た。

「先輩、こんにちは!暑いんでよかったらこれもどうぞ」

俺は牧場先輩に塩分チャージの飴を渡す。熱中症予防は水分だけを摂っていればいいのではない。汗をかくと、塩分も一緒になくなってしまうのだ。

「……ありがと」

人と話すことがあまりない牧場先輩は、うつむきながらそう言い受け取る。俺は黙って首を横に振った。

「剣先輩!練習試合するなら俺と勝負してください。先輩にまだまだ教えてもらいたいことありますから!」

英二が俺の道着の袖を引っ張る。英二はなかなかの実力があるのだが、あまり自分の剣道に自信がない。

「わかった」

俺はそう言い、自分の防具を手に部室を出た。
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