瓦礫の剣士
みんなが揃い、練習が始まった。

「姿勢を正して、黙想〜!!」

青羽先輩の声で、全員目を閉じて心を空にする。目を閉じると、耳に開けられた窓から入ってくる風の心地よさが頰をくすぐる。儒教の静座法取り入れられた黙想の時間が、これから始まる練習へのやる気を生まれさせる。

体操と筋トレをし、素振り、足さばきの練習をした後は、防具をつけての練習だ。

「いやぁ〜!!面〜!!」

掛け声とともに、竹刀を大きく振りかぶり前へと飛び込む。バシンと尚の面に竹刀が当たった。

「声!!まだまだ出るぞ〜!!」

青羽先輩の声に、俺たちは「はい!!」と声を出す。腹の底から声を出し、相手を威嚇する気持ちでしなければならない。

「いやぁぁぁ!!小手〜!!」

「胴〜!!」

バシン、バシンと竹刀の音と声が響く。暑いため、もう俺の頰を汗が伝っていた。それでもこの状況が楽しい。笑える余裕もある。

俺にとって、剣道はPTSDの強力な良薬だ。剣道に集中すればするほど、震災のことを忘れられる。
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