うさぎ
「でも、隆之はいっつもあの女の子の事を考えてたんだよね」

先輩から、涙が一筋零れ落ちる。

俺は静かに頷いた。

「そんな隆之を見てたら、いつしか私のものにしたいって思うようになった。
隆之の考えてること、全部私で埋め尽くしたいって」

先輩はくるりと回転すると、俺に背を向ける。

「ちょっとずつ隆之と仲良くなって、いつしか付き合えたらいいなって思って、私は隆之と名前を呼び合うことから始めようと思ったの」

先輩の肩が、やけに小さく見える。

多分、それがあの日なんだろう。

俺と先輩の、始まりの日。

「…だけど、隆之は私を名前で呼んでくれなかった。
それが悔しくて、だから私はあの日あんなラインを送ったの」
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