うさぎ
「ひどいよ…、そんなの」

思わず、声に出てしまった。

「そうだよ、俺はひどいやつだよ」

隆之は傷ついた様子もなくそう言って、私の横を通りすぎていく。




―――待って、待って隆之!





私は隆之の事をまだ行かせたくなくて、隆之の手首を掴んだ。





「―――ッ!さわんなっ!」






瞬間、 隆之はすごい勢いで私の腕を振り払った。

バチンとはねのけられた手が痛む。

隆之…、私に触れるのも嫌になったの…?

目にじわっと涙がたまる。

隆之は溜め息をつくと、私の頭にばさりとタオルをかけた。

「…泣くな」

それだけ言うと、また裏門に向かって歩いて行ってしまう。

七年前と違う、大人びた背中。

私は隆之の背中に届かないと分かりながらも手を伸ばす。
< 33 / 200 >

この作品をシェア

pagetop