うさぎ
「う、うんっ…!覚えてくれてたよ…!」

私は何とか元気を取り繕って答えた。

嘘ではない。

実際、隆之は私のことを覚えてくれていた。

「おー!それでそれで?あの約束は?」

美和が好奇心満載って感じで聞いてくる。

私は唇をきゅっと結んだ。

美和にあったことを伝えるのにも不安になって、鼻がひくひくしてしまう臆病者の私。

…本当にうさぎみたいで嫌になる。

私はごくりと唾を呑み込んだ。

「もう、忘れちゃえって言われた…。あんな約束、引きずってるのは私だけだって…」

言いながら私は馬鹿だよねぇ、と笑う。

笑わないと、またどうしようもなく泣いてしまいそうだったから。

しかし、そんな私の空元気にも、美和は気づいてしまう。
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