うさぎ
それなのに、この場に先輩がいる。

心臓が恐怖でさっきからバクバクしている。

先輩は笑って言った。

「私、隆之が引っ越すなんて、知らなかったなぁ」

嫌な汗が伝う。

笑顔が怖い。

俺は何も言えず、先輩から目線をそらす。

先輩は笑ったまま、俺の耳元に近づいてぼそりとこう言った。

「あっちで彼女作ったら、私死ぬから」

どくんと心臓がはねる。

一瞬、思い出したのは真於の顔だった。

駅のアナウンスで新幹線の発車が近いことを知らされる。

俺は何も言わず、新幹線に乗り込んだ。

プシューッと、ドアが閉まる。

最後に窓から見えた先輩の顔は、

























――――――――俺を殺意のこもった目で睨んでいた。











< 78 / 200 >

この作品をシェア

pagetop