ロボットな同僚
彼、は私が補佐についている営業社員だ。
営業成績トップの彼は忙しく、当然補佐についている私も忙しい。
今日のようなことは日常茶飯事。
それはまあいい。
……いや、よくはないけど。
でもそれ以上に私には彼が苦手な理由がある。
「まだやってたのか」
七時を過ぎ、彼が帰ってきた。
「これ、入力してしまっとかないと、明日の仕事に響くので」
私の手元には出ていくときに彼から手渡された、カタログが広げられている。
「わるいな」
うん、わるいって思うんだったら、そういう顔して?
いっつもいっつも能面みたいな……いや、能面の方が角度によって表情変わって見えるから、あなたより表情が多いよ?
椅子に座り、彼はパソコンを立ち上げていた。
いまからさらに、仕事をするらしい。
彼が残業するなんて珍しかった。
要領よく仕事をこなし、たいてい定時には帰っていく。
しかも仕事は軽く人の倍はやっている。
そのうえ無表情なもんだから、ロボットじゃないかって疑っている私に罪はないはずだ。
「それ、あとどれくらいで終わりそう?」
「一時間くらい、ですかね」
「ふうん」
いやだから。
なぜ聞いた?
聞いといてふうんってなに?
毎回毎回、それにどう反応していいのかわかんないんですが。
私は彼と、全く意思の疎通ができない。
仕事上は支障がないので問題ないといえば問題ない……のか?
とにかく、人に聞いといて自分はふうん、とかそういう答え。
さらには表情はロボット……いや、今日日のロボットの方が表情豊かだ。
あれとまともに意思疎通ができるのは、超能力者くらいしかいない。
だから私は、彼が苦手なのだ。
もうすでに彼は無言でパソコンに向かっていたし、私も無言で入力を続けた。
そのうち残っていた人もひとりふたりと帰っていき、気づけば彼とふたりっきりになっていた。
カタカタとキーを打つだけが響き、なんだか空気が重い。
苦手な彼とふたりっきり。
さっさと終わらせて帰りたくて、キーを打つ手をさらに速める。
「おわっ、たー」
保存だけして発注はせずに画面を閉じる。
最後、駆け足で入力していただけに間違っていたらと思うと怖い。
明日、チェックしよう。
「お疲れ様でした。
お先に失礼します」
さっさと片付け、そそくさと席を立つ。
「お疲れ。
俺も帰るから」
なぜか彼もパソコンの電源を切り、椅子から立ち上がった。
「え……」
「なにしてる。
さっさと帰るぞ」
入り口で、ついてこない私を不審に思い彼が振り返る。
いやいや、ひとりで帰りますって。
「ほら、早く」
営業成績トップの彼は忙しく、当然補佐についている私も忙しい。
今日のようなことは日常茶飯事。
それはまあいい。
……いや、よくはないけど。
でもそれ以上に私には彼が苦手な理由がある。
「まだやってたのか」
七時を過ぎ、彼が帰ってきた。
「これ、入力してしまっとかないと、明日の仕事に響くので」
私の手元には出ていくときに彼から手渡された、カタログが広げられている。
「わるいな」
うん、わるいって思うんだったら、そういう顔して?
いっつもいっつも能面みたいな……いや、能面の方が角度によって表情変わって見えるから、あなたより表情が多いよ?
椅子に座り、彼はパソコンを立ち上げていた。
いまからさらに、仕事をするらしい。
彼が残業するなんて珍しかった。
要領よく仕事をこなし、たいてい定時には帰っていく。
しかも仕事は軽く人の倍はやっている。
そのうえ無表情なもんだから、ロボットじゃないかって疑っている私に罪はないはずだ。
「それ、あとどれくらいで終わりそう?」
「一時間くらい、ですかね」
「ふうん」
いやだから。
なぜ聞いた?
聞いといてふうんってなに?
毎回毎回、それにどう反応していいのかわかんないんですが。
私は彼と、全く意思の疎通ができない。
仕事上は支障がないので問題ないといえば問題ない……のか?
とにかく、人に聞いといて自分はふうん、とかそういう答え。
さらには表情はロボット……いや、今日日のロボットの方が表情豊かだ。
あれとまともに意思疎通ができるのは、超能力者くらいしかいない。
だから私は、彼が苦手なのだ。
もうすでに彼は無言でパソコンに向かっていたし、私も無言で入力を続けた。
そのうち残っていた人もひとりふたりと帰っていき、気づけば彼とふたりっきりになっていた。
カタカタとキーを打つだけが響き、なんだか空気が重い。
苦手な彼とふたりっきり。
さっさと終わらせて帰りたくて、キーを打つ手をさらに速める。
「おわっ、たー」
保存だけして発注はせずに画面を閉じる。
最後、駆け足で入力していただけに間違っていたらと思うと怖い。
明日、チェックしよう。
「お疲れ様でした。
お先に失礼します」
さっさと片付け、そそくさと席を立つ。
「お疲れ。
俺も帰るから」
なぜか彼もパソコンの電源を切り、椅子から立ち上がった。
「え……」
「なにしてる。
さっさと帰るぞ」
入り口で、ついてこない私を不審に思い彼が振り返る。
いやいや、ひとりで帰りますって。
「ほら、早く」