ロボットな同僚
「そろそろ帰ろう。
もう遅い」

「そ、そうですね」

境内を出ていく彼を追う。
歩く速度はゆっくりめ、ときどき私がちゃんと来ているか振り返る。
あれはもしかして、私を気遣ってくれているのだろうか。
仕事終わりの予定を聞いたのも、自分の仕事をそれに合わせるため。

「じゃ、また明日」

「送ってくださって、ありがとうございました」

初めて彼にお礼を言った。
だって、言いたくなったから。

「ん」

くいっ、彼が眼鏡をあげる。

「じゃあ」

私がホームに向かっても、彼はまだそこに立っていた。
なんだかとっても気分がいい。
だってさっき眼鏡をあげた、彼の耳の先が赤くなっているのに気づいてしまったから。

「明日はもっと、話してみよう」

彼はロボットなんかじゃない、ちゃんとした人間だ。
感情表現が下手なだけの。

きっともっと仲良くなれば、知らない顔が見えてくる。

もっと、もっと――彼を知りたい。
そしてもっと、あの笑顔を見たい。


【終】
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