光りの中
中日替え。
週の前半と後半で出し物を替える事を言う。
劇場によっては積極的に奨励する所もあるが、面倒くさがる照明係だと、嫌がられたりもする。
お客さんの中には、十日間の間に何度か足を運ぶ人も少なく無い。
お目当ての踊り子ではないにしろ、違う出し物が十日間の間で観れるというのは、目に見えないファンサービスにもなる。
拒む照明係が居るとすれば、それは自分本来の仕事というものを判っていないのだと晒け出してるようなものだ。
中日替えの演目の打ち合わせを姿月としている間中、どう演出するかを夢中になって語り合っていた。
「先ずは、明日の一回目で実際の雰囲気を掴んで、後は少しずつ手直しして行きましょう」
「ありがとう。とにかく、めり張りだけきちんと付けてくれたらええから」
ボヘミアンバレエと名前を付けられた中日替えの演目と出会えた事は、自分の照明に対する感性の向上になった。
噴き上げるスモーク
無数に交差するライト
激しい動きから一転して、妖艶に、そしてなまめましく演じる姿月に、観客の誰もが見とれていた。
いや、客だけでは無かった。
照明室の中に居た僕自身が、実は一番彼女に夢中になっていた。
片時たりともステージから目を離す事が出来なかった。
自分の照らし出す照明の中に姿月が浮かび上がる度に、僕はこの時間が終わらないでくれと願った。
何日目であったろうか。
彼女から、小倉の劇場の照明が今までで一番良かったという話しを聞き、丁度その時のビデオがあると言われ、僕はそのビデオを彼女から借りる事にした。
仕事を終え、一人そのビデオを観た。
衝撃的であった。
光りを自由に操っている……
踊り子にどういう光りを当てれば一番美しくなるかを、そのライティングは熟知していた。
光りに命があった。
次の日から、僕の照明のライバルは前夜に観たビデオとなった。
姿月が語る小倉の劇場の照明マンに僕は嫉妬した。
この人を本気で演じさせる照明をしなきゃ……
毎回、もう少しという不満感を己の中で感じながら、気が付けば既に楽日を迎えていた。
週の前半と後半で出し物を替える事を言う。
劇場によっては積極的に奨励する所もあるが、面倒くさがる照明係だと、嫌がられたりもする。
お客さんの中には、十日間の間に何度か足を運ぶ人も少なく無い。
お目当ての踊り子ではないにしろ、違う出し物が十日間の間で観れるというのは、目に見えないファンサービスにもなる。
拒む照明係が居るとすれば、それは自分本来の仕事というものを判っていないのだと晒け出してるようなものだ。
中日替えの演目の打ち合わせを姿月としている間中、どう演出するかを夢中になって語り合っていた。
「先ずは、明日の一回目で実際の雰囲気を掴んで、後は少しずつ手直しして行きましょう」
「ありがとう。とにかく、めり張りだけきちんと付けてくれたらええから」
ボヘミアンバレエと名前を付けられた中日替えの演目と出会えた事は、自分の照明に対する感性の向上になった。
噴き上げるスモーク
無数に交差するライト
激しい動きから一転して、妖艶に、そしてなまめましく演じる姿月に、観客の誰もが見とれていた。
いや、客だけでは無かった。
照明室の中に居た僕自身が、実は一番彼女に夢中になっていた。
片時たりともステージから目を離す事が出来なかった。
自分の照らし出す照明の中に姿月が浮かび上がる度に、僕はこの時間が終わらないでくれと願った。
何日目であったろうか。
彼女から、小倉の劇場の照明が今までで一番良かったという話しを聞き、丁度その時のビデオがあると言われ、僕はそのビデオを彼女から借りる事にした。
仕事を終え、一人そのビデオを観た。
衝撃的であった。
光りを自由に操っている……
踊り子にどういう光りを当てれば一番美しくなるかを、そのライティングは熟知していた。
光りに命があった。
次の日から、僕の照明のライバルは前夜に観たビデオとなった。
姿月が語る小倉の劇場の照明マンに僕は嫉妬した。
この人を本気で演じさせる照明をしなきゃ……
毎回、もう少しという不満感を己の中で感じながら、気が付けば既に楽日を迎えていた。