光りの中
 紀子の机に勝又が来て、


「ジュースとコーヒー、どっちがいい?」


 と言って来た。

 何故かドキドキした。


「は、はい。じゃあジュースを……」

「オーケー」


 缶ジュースを渡された時、微かに手が触れた。

 慌てて手を引っ込めようとして、渡されたジュースを取り落としてしまった。


「あっ、ご、ごめんなさい!」

「いいよ、いいよ。落としたやつは僕が飲むから。残ってるの、コーヒーしか無いけど構わないかい?」

「本当にすみません」

「歓迎会の時、栗田君の隣に座っていた子だよね」

「はい」

「僕は営業課の勝又亨です。普段、外回りばかりだから社内で顔を合わす機会は少ないと思うけど、よろしく」

「は、はい。わたし、浅岡紀子といいます」

「知ってるよ。君が今一番社内で男性社員からの注目の的だという事もね」

「えっ!?」


 紀子が顔を見上げると、勝又はニコリと微笑み、


「じゃあ、仕事頑張ってね」


 と言ってタイムカードを押しに立ち去った。

 手にした缶コーヒーを持ったまま呆っとしていたら、先輩の女子社員に注意をされた。


「早くその書類、ワープロで清書してくれへん。後がつっかえてんやから」

「すいません」


 慌てて机に向かい直し、書類に目をやると、小さく折り畳まれた紙片が目に入った。

 紀子はその紙片を誰にも見られないようにそっと手の中に入れた。



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