光りの中
 自分は果たして勝又に恋人として認めて貰えているのだろうか?

 単に都合のいい手軽な女……


 女の影を感じたというのは、ひょっとしたらそういう部分でなのかも知れない。

 慌ただしく夏も過ぎ、街並の街路樹の葉が路上にちらほら舞いはじめだした頃になると、勝又と過ごす機会が減り始めて来た。

 会うには会ってはいる。

『雅』で軽く一杯飲んでそのまま別れるといった日が続く事が多くなった。

 時には待ち合わせをしておきながら、都合が悪くなったからと言って『雅』に一人ぽつんと取り残された事もある。

 それでいて紀子の都合は聞かない。

 何時も自分の都合で一方的に会えないかと言って来る。

 流石に一度その事で喧嘩をした事があった。


「毎日決まった時間に帰れる女子事務員さん達と違って、俺達営業マンは退社時間後も接待やら何やらで忙しいし、時には帰宅途中に電話で呼び出される事もあるんだ」


 感情を高ぶらせる訳ではなく、静かな物言いなのだが、寧ろそれが冷たさを感じさせる。


「ごめんなさい」


 そう謝る紀子に、


「判ればいい。特に今からの時期は余計忙しくなるから、決まった日に会うとか出来なくなると思う」


 感情の起伏が無い言葉の為か、紀子の不満は宙に浮いたまま、より不安を募らせる事になった。


「ねえ、一つだけ聞いてもかまへん?」


 無言のまま頷く勝又に、


「アタシの事、ほんまに好き?」


 そう言った。

 言った瞬間、紀子はしまったと思った。

 男というものは、女が愛情確認を迫ると疎ましく思う所がある。


「ああ、好きだよ」


 抑揚の無い言葉が、再び紀子の不安を煽った。






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