光りの中
6…新たなる世界
大阪の夏は思いの外暑い。
その日も朝から蒸し暑かったのを紀子ははっきり覚えている。
そして、その日の午後に掛かって来た電話が、自分の人生を大きく変える事になった事も……。
三時の休憩時間中に会社へ電話が入った。
「紀子ちゃん、山崎さんて人から電話やけど」
「山崎さん……?誰やろ」
「私用の電話はあかんからね。要件が済んだらはよ切ってな」
「判ってます」
同じ課の先輩事務員が嫌味たっぷりに言う。
「もしもし、お電話替わりましたが……」
(ノリちゃん、うちや、凜子や)
「なんや、凜子姉さん……ごめん、大きな声出してしもうた」
(雅子ちゃんにあんたの会社の電話番号聞いたんやけど、迷惑やった?)
「ううん。なあんも。ただ、余り長話しはでけへんから、仕事終わったら梅田辺りで会わへん?」
(そやな、電話で話すのも何やし、そうしよか)
「ほな、梅田の阪急前で」
(判った)
一年半振りに聞く凜子の声に、紀子の心は浮足立った。
雅子と姉妹とは聞いていたが、どういう訳か、これ迄再会の機会が無かった。
雅子の話しによると、『エル·ドラド』の客と結婚したらしい。
山崎と名乗っていたのは、今の姓なのだろう。
五時の終業と同時に、紀子は急いで帰り仕度をした。
皮肉たっぷりの嫌味を聞き流しながら、紀子は凜子との待ち合わせ場所へと急いだ。
阪急デパートの正面入口の前に凜子は居た。
少し痩せたせいか、優しかった面立ちが、キリッとした感じに変わっていた。
「凜子姉さん、ご無沙汰してました」
「ほんま、久し振りやね。雅子ちゃんからはいろいろ話しは聞いてたんやが、私もあの後暫くして店を辞めてな、今は東京におるんや」
「東京?」
「まあ、此処で立ち話もなんやから、お茶でも飲みながら話そ。積もる話しも山程あるし」
二人は阪急デパートの中にある喫茶店に入った。
その日も朝から蒸し暑かったのを紀子ははっきり覚えている。
そして、その日の午後に掛かって来た電話が、自分の人生を大きく変える事になった事も……。
三時の休憩時間中に会社へ電話が入った。
「紀子ちゃん、山崎さんて人から電話やけど」
「山崎さん……?誰やろ」
「私用の電話はあかんからね。要件が済んだらはよ切ってな」
「判ってます」
同じ課の先輩事務員が嫌味たっぷりに言う。
「もしもし、お電話替わりましたが……」
(ノリちゃん、うちや、凜子や)
「なんや、凜子姉さん……ごめん、大きな声出してしもうた」
(雅子ちゃんにあんたの会社の電話番号聞いたんやけど、迷惑やった?)
「ううん。なあんも。ただ、余り長話しはでけへんから、仕事終わったら梅田辺りで会わへん?」
(そやな、電話で話すのも何やし、そうしよか)
「ほな、梅田の阪急前で」
(判った)
一年半振りに聞く凜子の声に、紀子の心は浮足立った。
雅子と姉妹とは聞いていたが、どういう訳か、これ迄再会の機会が無かった。
雅子の話しによると、『エル·ドラド』の客と結婚したらしい。
山崎と名乗っていたのは、今の姓なのだろう。
五時の終業と同時に、紀子は急いで帰り仕度をした。
皮肉たっぷりの嫌味を聞き流しながら、紀子は凜子との待ち合わせ場所へと急いだ。
阪急デパートの正面入口の前に凜子は居た。
少し痩せたせいか、優しかった面立ちが、キリッとした感じに変わっていた。
「凜子姉さん、ご無沙汰してました」
「ほんま、久し振りやね。雅子ちゃんからはいろいろ話しは聞いてたんやが、私もあの後暫くして店を辞めてな、今は東京におるんや」
「東京?」
「まあ、此処で立ち話もなんやから、お茶でも飲みながら話そ。積もる話しも山程あるし」
二人は阪急デパートの中にある喫茶店に入った。