光りの中
 龍之助は今の高揚した気持ちを思い切り吐き出したい気持ちで仕方が無かった。

 友人から誘われてたまたま観に行ったストリップ。

 ショックを受けた。

 自分がそれ迄抱いていたストリップへのイメージは、世間一般の人間が思っているものと大差ないものであった。

 自分自身、食えないまでも、画家として生きている身であったから、イマジネーションを鋭敏に保たせる意味もあって、物事を偏見の目で見たり、印象を持たないようにしていた筈だった。

 が、今回ばかりは己を恥じた。

 大袈裟かも知れないが、それ位衝撃的だった。

 その踊り子のステージはストリップへの概念を覆してくれた。

 踊りだけならもっと上手い踊り子が居るだろうし、何もストリップではなくてもちょっとした高級ショークラブ辺りならダンスだけで飯を食っている者も多い。

 現実にそういう人間を知っている。

 彼女はそういった範疇を越えた存在として、いきなり自分の前に現れたのだ。

 初めて観た日から連日足を運び、彼女の造り出す世界をこの目に焼き付けようとした。

 焼き付けたものを自分自身の感性で咀嚼し切れるかどうか判らないが、彼女の世界を自分なりに具現化してみたいと思った。

 ただ、それをどういう形でとかまでは、まだはっきりとしていない。

 今は観て来たばかりの高揚感に自分の心が沸き立っている。

 もっと自分の気持ちが落ち着いた時にそれを表現したいという反面、今の沸き立つ勢いのままを真っ白なキャンパスに描き殴りたいという思いもあった。

 龍之助は帰りの車の中で、この次にステージを観に行ったら、絵のモデルになって貰う事を言ってみようと心に決めた。



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