光りの中
 一人の踊り子の為に、ファンやその踊り子を慕う別な踊り子も含めて、何とかちゃんとした引退興行をやらせて上げたいという声が沸き上がる事自体、稀有なケースだ。

 いかに姿月のステージに魅せられた者が多いかが判る。

 だが残念な事に、これは実現しなかった。

 元の所属劇場との関係を考えて、わざわざ協力しようなどと言う業界関係者は一人も現れなかった。

 もう二度と姿月にライトを当てる事は無い……

 悔しさと悲しさが交錯し、気持ちの中に見えない空間が一つ出来た。

 新しい感動に出会えれば、それで多少は空いた隙間を埋める事が出来たかも知れないが、姿月の代わりは姿月以外には埋められない。

 彼女が与えてくれたものの大きさを僕らは失って初めて気付いた。

 あの十一日間の奇跡は、やはり奇跡だったのだ。

 真夏の夜の夢……

 いや、夢と呼ぶには余りにも鮮烈過ぎる時間だった。

 故に、十年以上経った今もそれは色褪せていない。

 これから先も褪せる事は無いだろう。


 そして、僕はあの時以上の感動を授かる事無く、姿月同様、ストリップの世界から身を引いた。






< 92 / 96 >

この作品をシェア

pagetop