光りの中
 姿月の引退を知った龍之助は、あの舞台をもう観れないのかと思うと残念で仕方無かった。

 描きかけの絵を仕上げるには、もう一度彼女のステージを観るのが一番と思っていたからだ。

 あの後、何度か劇場に足を運び、他の踊り子のステージを観た。

 プロのダンサー顔負けの踊りを見せてくれる踊り子も居た。

 アイドルタレント並に若くて可愛い踊り子とも出会えた。

 だがあの時、姿月から受けたような衝撃は、ただの一度も味わえなかった。


 この絵は未完のままになってしまうのか……


 大きな羽根を手にした裸像の絵は、まさに姿月そのものであった。

 龍之助は、そのキャンパスに布を掛け、筆を置いた。






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