意地悪な先輩
episode.1

転校生

ただ平穏な日常生活を送りたいだけ。
密かに目立たないようにそれを生き甲斐に私は高校生活を満喫していた。


そうあの人がこの学校に来るまでは……



太陽が燦々と照りつけて夏が始まり出したこの季節。
私たちの高校はもう直ぐ夏休みが始まる中、一つ上の先輩たちのところに転校生が
来ると言う噂が流れてきた。



「この時期に転校生って珍しいよね。しかも高3で」

そう言って私の席の前に座ってきたのは親友の風間 瑞希(かざま みき)。


「確かに。でも私たちにはあまり関係ないけどね」
「相変わらず冷めてるねえ」
「うるさい」


よく周りには冷めてるなんて言われてるけどそう言うことではなくて
ただ余り目立ちたくないだけ。

静かに時を過ごして居るのにはある程度の距離感とある程度のお喋りだけで充分。

その考えがいつしか “冷めてる子” って言う印象になってしまった。


「今日お昼どうする?」
「お弁当忘れちゃったから食堂で食べる」
「じゃあ瑞希もそうするよ」


そう言って瑞希は席を離れた。


お昼も何もまだ学校来たばかりなのに相変わらずだな瑞希は。


そう思いながらチャイムが鳴った瞬間担任が入ってきた。
静かに出席確認が始まり授業が始まる。


窓際の一番後ろの席の私は授業中ほぼ外を見て過ごすことの方が多い。


正門側に目をやるとチャイムも鳴ってもう授業が始まっているのに
走りもせずポッケに手を突っ込みながらゆっくり歩いている男子生徒を見つけた。


金髪に近い色は遠目に見ても綺麗で、少し美しく見えた。


ズボンの色的に一つ上の先輩ぽいけど、あんな派手髮居たかな。
もしかして転校生? それにしても初日から遅刻って。


じっと見つめていると男子生徒が顔を上げこちらに視線をやってきた。
その瞬間目が合ってしまい私は咄嗟に机に顔を伏せ隠れてしまったのだ。


今の絶対目合ったよね。
なんかどうしよ、コイツなんだって思われて教室乗り込んできたら。


そわそわしながらもう一度視線をやるとそこにはもう彼の姿は無かった。


「よかった…」

少し安堵した瞬間、教室のドアが開いた。
そこに立っていたのさっきまで下に居たはずの先輩だった。
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