赤い月が昇るとき
9月の冷たい雨が降り続く。
プーーッとクラクションの音が鳴り響き、灯花を乗せた車がゆっくりと通り過ぎていく。
「みんな、頭を下げて。」
担任の佐野先生の言葉に従って私達は、頭を下げた。
同級生の列からすすり泣く声が聞こえる。
でも、それは嘘泣きだということを私は知っている。
車の姿が見えなくなると、みんなは不満の声を漏らした。
「あー。だる〜。」
「それな〜」
「てか、今から学校戻るとかやなんだけど。」
「しかも線香くさ〜。」
遺族がいないことを理由にグチグチと言うクラスメイト達。
「じゃあ、皆さん。今から学校に戻ります。授業は30分後からです。」
佐野先生が指示を出し、私達は歩き出した。
「てかさ、アイツ意外とモロかったね。」
「いっつも平気ですって顔してたもんね〜。」
「正義感だけは強かったのに。こんなあっけないんだ」
「ねぇねぇ紗枝。次は誰にしよっか?」
灯花をいじめてた奴らの声が聞こえる。