夏の宵と林檎飴【短編集】
「っわ、すごい…!」
“家を出た”といってもほんの数10mほど先にある小高い丘の上に出ただけだったから、きっと大人たちにはバレバレだったんだろう。
程なくして打ち上がり始めた花火はとても綺麗で、いつの間にか言葉も失って2人して見上げていた。
赤、青、緑。
カラフルで、子供ウケするような絵柄の花火まで打ち上がって。
終わる頃には来た時よりも強く大和と手を繋いでいた。
「つれてきてくれてありがとう、あやちゃん。らいねんもいっしょにみようね!」
「うん、またみようね…。」
大和に来年の約束をきちんと返せなかったのは、もうその時には私の引越しが決まっていたからだ。