再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛~

弁当の配達を二件終え、少し遅めの昼休憩を取る。
配達は徐々に増えてきている。
本当は配達にもっと力を入れたいけど、今の現状では人手が足りないから難しい。
おじさんが配達専門の人を雇おうとか話していたけど、どうなったんだろう。

休憩時間は昼ご飯を食べたり、雑誌を読んだりテレビを見たり、パートの人と雑談をしたりとのんびり過ごしている。
今日は私ひとりなので、早々と休憩を終わらせてお店に出た。

「美桜ちゃん、肉じゃがと野菜炒めと春巻きが出来上がったから持って行って」

「はーい」

おばさんが厨房から私を呼ぶ。
大皿に盛りつけられたおかずを順番に運ぶと私は手書きのポップを添える。

「こんにちは」

「いらっしゃいませ、上村さん」

店に入ってきた初老の女性を笑顔で迎える。
名前は上村さんといって、近所のおばあちゃんだ。
旦那さんは数年前に亡くなり、今は独り暮らしだ。
初めはふさぎ込んでいたみたいだけど、老人会の友人に誘われてゲートボールをしたり旅行をするまでになった。

この店を利用してくれるきっかけは、上村さんの娘さん。
近くに住んでいる娘さんがここの惣菜買って持って行った時に食べたら美味しくて、気に入って通うようになってくれた。
常連となった上村さんは、パートの人たちと世間話をしたり旅行のお土産を持ってきてくれたりしている。

上村さんが来るのは昼と夕方の間、忙しくなる時間帯の前にやってくる。
今日も十六時過ぎにビニール袋をぶら下げてお店の中に入ってきた。
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