再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛~
哲平side
仕事を終えると行きつけのバー、『ダークムーン』に足早に向かう。
木製の扉を開けるとドアベルが鳴った。
薄暗い店内のカウンターに、一人の男が座っていた。
「久しぶりだな」
スーツのネクタイを緩めながら、その男の隣に座る。
「哲平くん、いらっしゃい」
「朔斗さん、ジンジャエール」
「は?お前、飲まないの?」
俺の注文した飲み物に驚いて突っ込みをいれるのは、長瀬貴臣。
俺の小学校からの友人だ。
すっと通った鼻筋にクールな印象の瞳、サラリとしたブラウンの髪。
ムカつくことに百七十九センチの俺よりも背が高く、百八十センチ超え。
家は老舗の玩具メーカー、貴臣もいわゆる御曹司というやつだ。
貴臣は俺の性格を熟知しているから、いつも冷静に助言してくれていた。
見た目は冷徹な印象を受けるが、情に厚い男だ。
「まぁな」
「何で?いつも酒飲むだろ」
「そういえば、この前も烏龍茶だったな」
朔斗さんが意味深な笑みを浮かべた。
それを聞いた貴臣が、俺とこのバーのマスターである朔斗さんの顔を交互に見る。
「え、この前もってどういうこと?」
「ちょっと、朔斗さん!」
朔斗さんは素知らぬ顔をしてグラスに注がれたジンジャエールを俺の前に置いて、カウンターの奥に入っていった。
貴臣からの視線を感じ、咳払いして口を開いた。
「あのさ、話があるって言っただろ」
貴臣に話があると言ってバーに呼び出していた。
美桜のことを話すためだ。