再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛~
向こうは私の存在に気づいていないと思う。
斉藤さんがこの辺りを歩いていたのは職場が近いから?
それとも、仕事でたまたま通りかかっただけ?
どちらにしても、この周辺は斉藤さんの行動範囲内ということだ。
怖くて黙り込んだ私に恵利さんは「どうしたの?顔色が悪いけど」と声をかけてくれた。
「いえ、何でもないです。昼休みが終わるので早く帰りましょう」
どうにか笑みを浮かべ答える。
「そうね。遅く帰ると鳴海くんも心配してるだろうし」
「どうしてそこでテ……鳴海くんが出てくるんですか」
恵利さんの口からテツの名前が出てきて、斉藤さんのことも忘れ動揺してしまう。
「えー、だって美桜ちゃんは鳴海くんの……。あ、鳴海くんの紹介でうちの会社に入ったんでしょ」
聞かれて頷く。
「鳴海くん、あの顔だしモテるからうちの会社はもちろん取引先の女子からの誘いは多かったの。でも、誰の誘いにも『興味ないんで』の一言でバッサリと断ってたから、一時期男が好きなんじゃないのかっていう疑惑まであったのよ」
恵利さんは思い出し笑いをしている。
というか、その疑惑は笑えるんだけど。
「でもね、そんな鳴海くんから緑さんの後任に知り合いの子がいるけど、どうですか?って社長に聞いてたの。もちろん、その知り合いは誰?って話になるでしょ。それで連れてきたのがこんなに可愛い美桜ちゃんなんだもん」
お世辞と分かっていても、可愛いと言われると照れてしまう。