再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛~

仕事中に普通のトーンで喋るとみんなに聞こえるじゃない。

周りを見ると恵利さんと目が合い、ニヤリと口許に笑みを浮かべていた。
やっぱり聞かれてたー!

テツにはそういう話があるならメールとかで送ってと言ったのに、入力するのが面倒とか言って聞く耳を持たなかった。
恥ずかしさで穴があったら入りたい気分だ。

「おいこら!俺は無視か?」

副社長がテツの頭をグリグリと触る。
その手を嫌そうに払うと、テツは大袈裟にため息をつき急に畏まった喋り方をする。

「副社長、こんなところでサボってないで仕事に戻られたらどうですか?」

「はぁ?俺がサボってるなら哲平もだろ!仕事中にイチャイチャするな」

「別にイチャイチャなんてしてません。食事に誘っただけですけど」

「それがイチャついてるんだよ。ホント、生意気なのは大人になっても変わらないな」

「大きなお世話です」

「はいはい、そこまで。あんたたち二人は仲がいいんだか悪いんだか。美桜さんの仕事の邪魔だから、さっさと自分の持ち場に戻りなさい」

社長が手をパン、と叩きその場をおさめる。
副社長は肩を竦め、自分の席に向かった。
あ、お弁当のメニュー……。
印刷して副社長に渡せばいいかと思い、パソコンのマウスに手をかけた。

「美桜、またあとで連絡する」

テツは私にそっと耳打ちしてきた。
まだいたのかー!
ジロッと睨むと、テツは何事もなかったかのように笑い背を向けた。
私はその後ろ姿を見て大きくため息をついた。
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