再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛~
掴まれた私の左手首は赤くなり、爪跡までついている。
「こっちがおとなしくしてれば調子に乗って」
斉藤さんは痛みで顔を押さえながら舌打ちする。
今が逃げるチャンスなのに恐怖で足がすくんでしまい、それが叶わない。
せっかく解放されたのに……。
もうダメだと諦めかけた瞬間、ふわりと後ろから抱きしめられた。
「美桜、遅くなってごめん」
その声を聞き、安堵から涙が出そうになった。
「テツ……」
「もう大丈夫だ」
力強く言い、テツは斉藤さんから私を庇うように自分の背中へ隠す。
テツのワイシャツが汗で濡れ、肩が上下と動いているのを見て私を探してくれていたんだということが分かる。
私を守ってくれるテツの背中はすごく頼もしかった。
「なんだ、お前は!」
「俺?美桜の婚約者だ」
「婚約者だと?嘘をつくな。それにみおってどういうことだ。彼女はナツキさんだろ」
斉藤さんは大声を出す。
「確かに夏木で間違ってない。改めて紹介するよ。俺の婚約者の夏木美桜。あと、なんでお前ごときに俺が嘘をつかないといけないんだよ。逆にお前は美桜のなに?というか、美桜の名前すら知らないとかあり得ないだろ」
テツは鼻で笑う。
喧嘩を売っているようにしか見えない。
この状態でそんなことを言って大丈夫なのか不安になる。
私はハラハラとテツたちのやり取りを見ていることしか出来ない。