再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛~

「そうですね。ありがたいことに配達も増えているので」

言われた内容に首を傾げながらも答える。

「そうなんですね。突然話しかけてすみません。あなたがいつもレジに立っていたのに、最近いない日が多いから気になってお店の人に聞いたんです」

えっ、どういうこと?
さっきからこの人の話す言葉に違和感を覚える。
目の前のサラリーマンは、きっちりとセットされた黒髪にスクエアフレームの眼鏡、穏やかそうな優しい顔立ちで、いかにも真面目って感じの人。
おばさんが好きそうな好青年なイケメンだ。

まぁ、私の周りでイケメンの筆頭と言えば……。
ゲッ、どうしてテツのことを思い出してんのよ!
いきなり脳内にテツの自信満々に笑う顔が浮かんだ自分に動揺してしまう。
今までだったら、そんなことは微塵も考えなかったと思う。
絶対にテツと再会したからだ。

私はあの夜のことを断片的にだけど思い出していた。
テツの熱を孕んだ瞳。
私にキスをする柔らかな唇の感触。
私の肌を愛撫する大きな手のひら。
全てにおいて翻弄されっぱなしだった。

私が『初めてだから』とか何か他にも言うと、テツは破顔した。
そして、テツが何か言葉を言ってた気がするけど、私は初めて感じる圧迫感と痛みで腕を引っかいてしまった。
いや、背中も引っかいたような……。
って仕事中に何を考えているんだ、私は!
不埒な思考を振り払い、深呼吸した。
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