再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛~
「普通、お客さんは裏口の方に来ることなんてないでしょ。それなのに、わざわざ裏口まで回って来るなんて……。何か待ち伏せされているような気がして怖くなったの」
その時の私に向けた笑顔を思い出しただけで身震いする。
「それでおばさんに相談して。あ、おばさんていうのは私のお母さんの妹で、あの店の店長の奥さんなの。おばさんからしばらくの間、仕事を休むことを提案されたの。でも、その間仕事ができなかったら困るから一旦、辞めることにしたの」
「そうだったのか」
私の話を黙って聞いていたテツが小さく息を吐く。
そして決意のこもった強い眼差しを向けてきた。
「美桜、俺の所へ来い」
「えっ、どういうこと?」
「そのストーカー、勘違いとかじゃないと思う。もし、そいつが粘着質だったら美桜の住んでいる場所とか突き止めるかも知れないぞ。少し前から店に通ってたんだろ。通勤しているところを見られていたら駅もバレてるかもしれない。美桜が辞めたことを知って家まで押しかけたり、美桜の行くところ全てで遭遇したらどうするんだ?」
テツに言われたことを想像したらゾッとした。
いくらお店を辞めたからといって、斉藤さんと会わないという保証はない。
きっと、明日も弁当を買いに来るだろう。
その時、お店で私が辞めたことを聞いてどう思うのかな。
それで諦めてくれたらいいけど、こればかりは分からない。
もし、斉藤さんの行動がエスカレートしたら私はどうしたらいいんだろうと不安に駆られた。