再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛~
私はそれ以来、テツを避けるようになった。
そして中学一年の夏、両親が離婚することになり私は母親の実家へと移り住むことになってテツとは疎遠になったーーーはずだったのに!
こんな形でテツと再会するなんて最悪だ。
テツを目の前にして、いろんなことを思い出す。
ひとつ後悔しているのは、大切にしていた桜のピンを勢いに任せて投げつけたことだ。
今さら言っても仕方のないことだけど。
というか、さっきからテツからの視線が痛くて私は思わず下を向く。
『お前、ブスなんだから顔を隠せよ』
昔、テツに言われた言葉が脳裏によみがえる。
あの時はショックで泣いた。
別に私は至って平凡な顔だから美少女ではないのは自覚している。
そりゃ、容姿端麗なテツに比べたら私なんてミジンコ以下のブスだと思うけど、テツに言われる筋合いはない!
あの暴言を笑って許せるほど私は寛大ではない。
目の前にテツがいるってだけでイライラが募る。
「美桜、弁当屋で働いてるのか?」
「……」
何か言われる前に立ち去ろうと思っていたら話しかけられた。
黙っている訳にもいかないので仕方ないので声を出すことなく頷いたけど、これ以上話すことはない。
「まだ仕事が残っているので失礼します」
一応、配達先の社員ということで丁寧に対応してエレベーターホールへ早足に向かう。
「美桜、ちょっと待って。話があるんだ」
そう言ってテツは追いかけてきた。