再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛~
今さらなんの話があると言うんだろう。
「私は話すことはないから」
「頼む、少しの時間でいいから」
懇願するように言ってくる。
いくら過去のこととはいえ、またテツに傷付けられたくない。
でも、テツの表情を見てその気持ちも揺らぐ。
幼稚園の頃、テツはすごく優しくて可愛くて私は大好きだった。
この気持ちが恋だということに気付いたのは小学校低学年の時だ。
テツが他の女の子と仲良く話している姿を見て、心がモヤモヤして母親に相談した。
母親が「それは美桜が哲平くんに恋をしているのよ」と笑いながら言われた。
いつも一緒にいたし、私の隣にテツがいるのは当たり前だと思っていた。
もしかしたらテツも同じ気持ちでいてくれているのかなと思っていたけど、それは私の勝手な願望でしかなかった。
テツは私のことなんてなんとも思っていないどころか、ブスだと思っていた……。
私の初恋はテツの暴言により無惨に散った。
「ほんの少しの時間でいいんだ。お願いだ」
必死に頼み込む姿を見て胸が痛む。
ここで分かったと言っていいのだろうか。
葛藤していたらエレベーターのドアが開き、一人の男性がそこにいた。
「あれ、鳴海。こんなところで何をしているんだ?」
「お疲れさまです。ちょっと知り合いがいたから話をしていたんです」
「へぇ、弁当屋さんに知り合いか」
そう言って男性は私に視線を向けてきた。