私の幸せ。
♪~
その時、そんな空気を裂くように、携帯の着信音がした。
携帯を取り出したのは、蒼。
どうやら、蒼の携帯が掛かってきたみたい。
「はい。
えっ、それマズッたなぁ…。
うん、一緒に居るけど?…了解。」
蒼はそう言って、通話を切ってしまった。
表情を見てる限り、何か問題が起きたみたい。
会話の最中、一瞬こっちを見た事に少し嫌な予感がした。
「あのさぁ…。」
「何??」
さっきとはうって変わって、かなり言いにくそうにそう声をかけて来た。
私もその雰囲気に少し緊張しながら答える。
「ちょっと問題があって。」
「うん…私、関係あるの??」
「うん……。
それがさぁ、大ありなんだよね。」
「えっ、」
「だから、悪いんだけど…とりあえずついてきて?」
そう言うと私の返事も聞かずに、蒼は私の腕を引っ張って昨日の屋上へ向かった。
廊下とかかなり女の子達の視線が痛かったけど…。
「連れてきたよ。」
あっという間に屋上について、蒼に皆の前に差し出される。
「雪姫、ごめんな。」
「ちょっと問題が起こりまして。」
時雨さんが謝った後、槙さんも申し訳なさそうにそう続けた。
「はぁ…あの、槙さん?」
「ぷっ、槙で良いよ。」
「俺も呼び捨て、タメグチで。」
私が問題とは何なのか聞こうとすると、槙さん…槙がこのピリピリした雰囲気に似合わず噴き出してそう言った。
それに続いて、時雨も続ける。
「うん、わかった。
私もそれで。
で、問題って??」
「実はね…誰が流したのかは分からないんだけど……。
昨日雪姫が此処に来た事、今敵対してる大蛇って族にバレちゃったらしいんだ。」
暗い顔をしながら、槙はそう説明した。
「えっ、それって危ないの?」
よく分からなくて、私は今日初めて拓真にも視線を向けつつ皆に聞いた。
「すっごく危険だよー!!」
蒼が何故か微妙にテンション高くこう言う。
「多分、俺らの姫もしくは関係者だと勘違いされたと思う。
雪姫は喧嘩出来ないだろ?」
「あぁ。」
時雨の問い掛けに何故か私本人ではなく、拓真が答える。
「大蛇は卑怯な手を使うので有名な族なんだ。
だから、僕ら翼龍の関東No.1の称号を奪うためなら、俺らの弱味になる人間を襲ってくる可能性が高いんだ。」
「その、弱味になる人間に勘違いされたと…??」
「あながち勘違いでもないけどね。」
私が時雨の説明を聞いて何となく察した事を確認すると、何故か意味深な感じで拓真をチラ見して頷いた。
「暫く、一緒に居てもらわないと駄目なんだ。」
「暫くって、どれくらい?
どの程度一緒に居れば良いの??」
「うーん。
学校では常に蒼かうちの面子と一緒に行動してもらって、放課後と休日は俺らの溜まり場に行ってもらう事になると思う。
期間は分からないかな。」
「そこまで……危険なの?」
「俺たちにとっての弱味はあいつらにとってはかっこうの餌食だ。」
そんなに長時間一緒にいないと危険って事に少し不安を感じて問いかけると、拓真がそう答えた。
「まさか、私の周りに居る人も危険になったりするの?」
「うん…大人とかはさすがに狙わないけどね。」
私の質問に槙がそう答えて、そこで私はこれから一番危険なのはここかもしれないと気づく。
どんどん血の気が引いていく気がした。
私が軽い気持ちで行動したばかりに、ここに何かあるかもしれないと思うと…。
「そんなの駄目!
あの子に何かあったら、私……。」
「雪姫?」
珍しく大声をあげた事により、皆も拓真も驚いたように私を見る。
「雪姫、ちょっと良い?」
「槙?」
「個人的に話があるんだ。」
そんな時、槙がそう切り出した。
こんな時にどんな話なのかと思ったけど、槙は空気読めそうだし、わざわざこんなタイミングで話を切り出すのには何か意味があるんじゃないかと思った。
しかも、とても嫌な予感がする。
だから、槙が少し離れたとこに向かうのに、まだここの事をどうしようかとかなり不安を持ったまま、その背中についていった。
この時、拓真が不安げに私達を見てた事には気づかなかった。