あたしと君とでひとつになる
「キューくん.......」



その名前に、この場から逃げ出したくてたまらなくなる。



「同じクラスなんすよ。高校はいって、同じクラスで見つけたときはびっくりしましたけどね」


「.......うそ」



誰か嘘だと言って欲しい。



「ずっと、知ってたの?知ってて隣の席にいたの?」


「あ?隣の席にいたのは偶然だろうが」



荻野さんに話すときとは違う態度であたしには接する。



「ひまりちゃん、大丈夫よ。キューくん、バラしたりはしないから」


「そりゃ、バラすような人ならもうバラしてるでしょうから、それはわかりますよ」



でも知っていて「美術の時の絵柄が好き」だなんて。
あたしにとっては、凄く嬉しい言葉だった。

なのに、彼がキューくんなら話は別だ。
馬鹿にされているような気さえしてくる。



「原崎くんのバカ!」



あたしはそれだけ叫んで、編集部を飛び出した。

走りながら、この前の教室での出来事が走馬灯のように蘇る。

「損してる」なんて、どうして言われるのかと思っていたけど、彼は全てを知っていたんだ。



「そういえば、絵柄が似ていたっけ」



今考えれば全て合致するのだ。

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