惑星のダンス
前回とは異なり余裕があったはずなのに、社長室を出た天は、脱力して壁に手をついてしまった。

ただ、愛のからかう言葉もない。重い沈黙が廊下を支配している。

「……えい、が……」

「天、初めて?」

「初めて……おまえ、あるのか?」

「初めて」

「…………」

「…………」

現実味がなさすぎる。実感がない。

それでも緊張と不安を心が感じていて、そして小さく期待が主張する。

重厚な扉にわずかに隙間ができていて、恐る恐る覗き込むような。

踵を鳴らして愛が歩き出した。華奢な背を、慌てて追う。
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