惑星のダンス
天と愛の二人を待ち受けるものは、しかしいいことばかりではなかった。

「……嫌がらせ、か?」

厳しい顔をするのは“Venus”マネージャーの黒森だ。

「珍しいことでもない」

「でも、今までで一番こええな……」

動じず冷静なのは愛で、顔をしかめるのが天だ。

取り囲むのはダンボール箱。

中身は手紙と包丁だ。ダンボール箱の中央に、刃を上向きにして、柄の部分を接着剤で固定した包丁が屹立している。それを取り囲み、覆い隠すように憎悪のこもった手紙が詰まっていた。

いわく、『アイにソラは相応しくない。今すぐ降りろ』。

「降りろったってもう配信待ってる状態だし……」

もちろん取りやめにしたりもしない。“天空を泳ぐ”の配信は一週間後。同日に歌番組に出演することも決まっている。

黒い文字で一面びっちり埋まった紙をつまんで、天はむしろ呆れと感嘆が混ざった心地がする。よくここまで手の込んだ……印刷代だってかかったろうに。
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