惑星のダンス
“Venus”がデビューしたのは、愛が十二歳のとき。中学一年生……だった。美姫はそのとき、十三だったっけ。

人が増えるにつれ活気を帯びていく学校の廊下。愛は特別棟に向かう。

すれ違う愛に視線を送る人はいない。

友人がいうところの『透明人間状態』。この術は小学生のときからの経験と鍛錬によって習得した。

白い肌を隠すためのファンデーション。目を小さく見せるメイク。

女の子の朝は忙しい。

特別棟の奥、音楽室の隣、美術室。

目当てはそこだ。朝は誰もいない。絵の具やニスの匂いさえ気にしなければ、飾られている油絵を眺めつつ、安泰な時間を過ごせる。

横開きの扉を開け放った。

それと同時に、「うわっ!?」。男の声。続いて、ダァン、と重い音。「いってっ!」。

「……?」

人がいたのか。なんと。誰だ?
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